「Ecoを考える」5限目:家庭用太陽光発電をお考えの方は必読です。

今回は、日本の送配電線網と太陽光発電の関係についてお話ししたいと思います。
 電気の基本原則は、“電圧は、高い方から低い方へ流れる”です。このことをイメージして、近所の電柱を眺めながら下記の文章を読んでみてください。
 電柱にはトランス(グレー色のゴミ箱みたいな形)がついています。そして電柱の一番上を通る3本の電線が、6600Vの高圧線です。トランスには、この高圧線6600Vの電圧を約100Vに落として家庭に供給する役割があります。そして、一箇所のトランスを経由した電気は、数世帯に配られています。

 それでは、A地区のAさん宅で太陽光発電の電気を売電した場合、この電気はどこに行くでしょうか?北陸電力に売電したのですから、全世帯に配られると思いがちですが、実際にはこの電気は、A地区のトランスでつながっている世帯だけで分け合うことになります。
A地区からB地区に電気は流れないのです。これはいったいなぜでしょう?
ここで電気の基本原理、“電圧は高い方から低い方に流れる”を思い出してみてください。A地区のAさん宅の太陽光発電の電気を高圧線6600Vにのせるためには、トランスで6600V以上にする必要がありますが、家庭用太陽光発電のわずかな電気では不可能です。
つまり、Aさん宅が北陸電力に売電したつもりの電気は、A地区のトランスでつながっているご近所にしか配れないのです。この点はあまり知られていないようです。

 では、もし、A地区の全世帯が太陽光発電の売電を考えたら・・・・Aさん宅だけではなく、全世帯がいくら太陽光発電しても売れなくなってしまいます。

・・・・すこし間違いがありました。下記の内容に訂正致します。
 (低圧系から6600V系への逆潮流はあります。そうでないと需要がない山中での太陽光発電は出来ません。40,50kWといった規模では低圧接続が主流です。 都市部ではトランスが少ないと低圧系での電圧が高くなりすぎて抑制がかかります。

以前は配電用変電所を越える逆潮流も規制されていましたが、現在は可能となっています。)


実際には、電力会社が買い取ってくれるのでこのような事は起きていませんが、太陽光パネルを設置する家庭が増えるにつれ、買い取り価格は減ってきています。
北陸電力についていえば、平成21・22年度に設置した家は48円/kwhでしたが、23年度に設置した家は42円/kwhに下がりました。
 今の日本の送配電線網の問題点が改善されない限り、電力買取り価格は今後も徐々に下がり続けます。太陽光発電のメリットだけでなく、このような点にも注意して、設置を検討したいところです。

 しかし、今の日本の送配電線網は、安定供給に関しては先進国の中でも一番優れています。年間停電時間は、アメリカやヨーロッパは50~100分、日本では19分です。
また、通信管理されているので、停電や事故にすばやく対応できています。太陽光発電や風力発電の再生可能エネルギーの技術ガ発達してきた今、それらを効率良く組み込むことのできる次世代送配電線網(スマートグリッド)が必要になってきています。

 今回のおまけ・・・アラブ首長国連邦のアブダビで、人口5万人の環境未来都市「マスダールシティ」の建設プロジェクトが2006年からスタートしています。
これは、電力のすべてを太陽光と太陽熱発電でまかない、海水から造水して、電動自動車だけを走らせて二酸化炭素排出量ゼロを目指すという画期的な構想です。2010年秋に大幅な計画の見直し案のニュースが話題になりましたが、最終的にどんな環境未来都市になるのかとても興味深いところです。

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