「Ecoを考える」11限目:家の長寿命とエコは繋がっています。

今の日本の住宅寿命は、家計と地球環境にやさしくありません。
まず、下記の日本・アメリカ・イギリス・フランスの『建築物の建替周期』の表をご覧ください。

ヨーロッパの国々は石造りの家が多いので、家の寿命が長くなるのは当然ですが、アメリカは日本と同じように木造住宅が多いにも関わらず、日本とは比べものにならないほど長い建替周期となっています。

 なぜ日本の木造住宅はわずか30年と極端に寿命が短いのでしょうか?
これは、高度成長期に建てられた家自体の性能も原因のひとつですが、日本の固定資産税の仕組みも大きく関係しています。
日本では、固定資産税の税制上、新築から25年~30年を過ぎると固定資産税は0円になります。
つまり、税制上は資産価値が無くなってしまうのです。このため、税制上で価値がないとレッテルを貼られた家は、まだ十分に住めるにも関わらず、いとも簡単に解体され、また新しい住宅が建築されるという『一代限りの家造り』が繰り返されているのです。
あまりにも速い建替周期のために、人生の大半を住宅ローンに追われることも少なくありません。これでは本当に豊かな生活とは言えません。

 これに対して、欧米では何代にも渡って一軒の家に住み続けることが一般的です。例えば、イギリスでは自分の代で家を建て替えるのはアンラッキーと言われるくらい、家は先祖代々大切に引き継がれています。
 また、中古住宅の資産価値が高く、成熟した流通市場があることも、建替周期を長くしています。
この結果、下記の表のように、日本の中古住宅の比率は欧米に比べて極端に低くなっています。

 家をグレードアップする時、日本人は建て替えることによって、欧米人は住み替えることによってそれを果たそうとします。
また、英語で中古車は「Used Car」で通じますが、中古住宅は「Used House」とは言いません。既存住宅「Existing House」が正しい言い方です。このように、家に対する価値観自体が、日本と欧米ではかなり違っているように思います。

 これからの日本は、右肩上がりが見込めない経済状況と少子高齢化の問題を抱えています。今までのような建替周期30年の「量」の消費型では、これからの時代に対応できません。欧米のように、大切にメンテナンスして価値を保つ「質」のストック型の家づくりに転換していくことが必要です。

 また、家の長寿命は温室効果ガス排出量削減にもつながります。家は、建築時と解体時にカーボンフットプリント量(※)が最も高い値になります。今のままの短い建替周期では、カーボンフィットプリントが増え続け、とても地球環境に良いとは言えません。建替周期の慣習を見直して、何代にも渡り大切に住み続けることが、家計と地球環境にやさしい暮らし方と言えるでしょう。

(※)カーボンフットプリントとは、(Carbon Footprint of Products)の略称です。
原材料から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガス排出量をCO2に換算して、分かりやすく数値化して表示する仕組みです。
この数値を把握し、より低炭素な生活を創造することで、地球温暖化の抑制に繋がります。

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